【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……棗さんも、知らないんですか?」
「ああ。……知った所で何にもならないしな。そもそも俺は社長に隠し子がいると知ったのは、高校の時だ。親父から直接聞かされた」
「…………」
わたしは何も言えなかった。棗さんに、義理の兄弟……。どんな人なんだろう。棗さんと義理の兄弟だと、その人は知ってるのかな……。
「そんな事実、知りたくもないと思っていた。……だけどそういうわけにはいかなくなった」
「え?どういうこと……ですか?」
「その隠し子は、鷺ノ宮家に関わっているんだ。……おそらくいずれは、後継者争いにもそいつが関わってくることになるだろうしな」
「……後継者?鷺ノ宮家の、ですか?」
「そうだ。その隠し子がもし自分の父親が鷺ノ宮家の社長で。……自分が鷺ノ宮家の血を引いているのだと分かれば、そいつだって鷺ノ宮家の一員だと認識せざるを得ないからな」
「……それは、そうですけど……」
「それにだ」