【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「今すぐじゃなくていい。……いつか俺たちの子供を作ることを、考えてみてくれないか?」
棗さんのその表情、その目。何かも真剣だった。わたしはいつか、彼との子供を持たなければいけない。……本気でそう思ったのは、確かだった。
だからかそ、わたしは本気で愛していかないといけない。そう思うのも、また事実だった。いつかなさんの子供を作って、鷺ノ宮家の後継者として育てていく。……それがわたしたちの、夫婦としての使命なのかもしれないと、その時本当にそう思った。
棗さんが子供を望むのなら、わたしは妻として、鷺ノ宮家に入った人間として、その責任を果たすべきだと直感した。
「……棗さん、わたし」
「なんだ?」
「……わたしは鷺ノ宮家の嫁として、もし後継者が必要なら、きちんとその責任を果たすつもりです」
「……聖良?」
「だけど今は、子供のことは考えられません。……わたしたちが夫婦として、きちんとやっていけるようになるまで、子供は作れません」