【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜




 「そうだな。俺もそう思うよ。……俺も聖良と同じ気持ちだ」

 「棗さん……」

 棗さんはわたしの頬に触れると、優しくキスを落とした。

 「……愛してる。聖良」

 「棗さん……」

 「聞いてくれ、聖良。……俺はずっと、お前のことを愛していく自信がある。お前のことを本当にいい妻だと思っている。聖良がいたから、俺は今こうして幸せだと思えるんだ。……結婚してくれて、ありがとう聖良」

 棗さんのその言葉ひとつひとつが、わたしの胸に突き刺さっていく。その言葉に嬉しくなって、泣きたくなる。だけどその反面、気持ちは複雑で……。

 棗さんがこんなにも優しくしてくれているのに、わたしはまだ棗さんの優しさが偽りなのではないか、そう思ってしまう。……わたしに言ってくれるその゛愛してる゛という言葉を聞くたびに、ズキッと心が痛むのが分かる。

 信じたいと思うのに、その気持ちが揺れ動いてしまう。……わたしだって、棗さんのことが好きなのに……。

 

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