【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
【鷺ノ宮家が生まれ変わる時Side棗】
「聖良、行ってくる」
「行ってらっしゃい。棗さん」
「今日は仕事の打ち合わせで会食がある。夕飯は作らなくていい」
「はい。分かりました」
「帰る時にまた連絡する。……もし出掛けるなら、ちゃんと戸締まり忘れないようにな?」
「分かってます。大丈夫です」
「そうか?まぁ気をつけてな?……行ってくる」
「行ってらっしゃい」
聖良が仕事に行くのを見送ってくれた後、俺は会社へと向かった。いつもなら自分の車で出勤するが、なぜか今日は家を出ると、親父の専属の運転手が迎えに来ていた。
「棗様、お迎えに上がりました。お乗りください」
「……笹山?なぜここに?」
「社長からのご指示です。さ、お乗りください棗様」
親父からの指示?一体どうしたんだろうか……。何かあったから迎えをよこしたとしか、思えないが……。
親父の専属の運転手の笹山(ささやま)。運転手歴もうかれこれ10年になる。鷺ノ宮家の事情を詳しく知っている唯一の人物だ。