【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
もしかしたら、鷺ノ宮家の跡取りの話か?俺たちの間に早く子供を作れと急かしてくるということなのか……?
頭の中はずっとそんなことばかり考えてしまって、会社に着くまでそれが何なのか気になって仕方なかった。
会社に着くと、すぐに社長室へと向かった。すぐにでも話したいという親父の意向だからだ。
「社長、俺だ。棗だ」
「入りなさい」
「……失礼します」
社長室に入ると、親父は一人外を眺めていた。そして俺の方に振り返り、一言言葉を放った。
「棗、大事な話がある」
「……はい。何でしょうか」
イヤな予感がした。……だけど予感は的中することになった。
「……俺は社長としての職を、退くことにした」
「え?……今、なんて?」
「俺は社長の職を退くことにした」
「は……?なんでだよ!?」
「俺に残された人生は、そう長くないからだ」
人生が長くない……?それはどういう意味だ……?一体何を言っているんだ……?