【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
親父がガン……。受け入れたくもない事実だ、そんなこと。信じられない。信じたくない……。
もし親父が死んだら、俺は二度と親父の顔を見れないのか……?そんなのは困る……。
せめて親父には、俺たちの子供の顔を見せてやりたい。死ぬまでに一度くらい、待ち望んでいるかもしれない孫の顔を、見せてやりたい。
「だからわたしは、社長の座から降りることを決めた。……次の社長は、棗。お前がやるんだ」
「……でも、俺は……。まだ社長になれるような器じゃない」
「そんなことを言ってる時間はない。……わたしに残された残りの時間をムダにはしたくない。だから棗、お前が次の社長になるんだ。鷺ノ宮グループを引っ張る、後継者になるんだ」
「……親父」
「俺はもう長くない……。いつまで生きていられるかは分からない。だけどお前ならやれると信じている。……お前は、わたしの自慢の息子だ。鷺ノ宮家の長男として、跡継ぎとして、ちゃんとやれると信じている」