【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「ただいま」
「おかえりなさい、棗さん。今日もお仕事、お疲れ様でした」
「ああ、ありがとう聖良」
仕事を終えて家に帰ると、聖良が玄関で出迎えてくれた。その姿を見るだけで、ホッとした自分がいた。
「夕飯出来てますけど、食べますか?それとも……」
「いや、夕飯の前にまずは聖良に話がある」
「話……ですか?」
「ああ。座ってくれ」
聖良と向き合うように座ると、早速話を始めた。
「実は……。親父がガンになったらしい」
「え?ガン……!?大丈夫、なんですか?」
「膵臓ガンステージⅢだそうだ。……1週間後に手術をすることになっている。しばらく入院することになるそうだ」
「……そう、なんですね」
「正直な話をすると……。手術をしたとしても、ガンは取り切れない可能性が高いと言われたそうだ。……もしかすると今後は、他の部分にも転移する可能性もあるかもしれないとも言われた」
「……そんな」