【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
聖良はすごく悲しそうな顔をしていた。
「……そこで、親父が社長の座を退くことになった」
「……え?」
「こんな体で社長を続けるのは、かなり難しいからと。いつまで入院することになるのか分からないからと、親父が言っていた」
「……そうですよね。そうなったら、仕事を続けるのは、ムリですよね」
「そこでだ」
「……はい」
「俺が親父の跡を引き継いで、社長になることになった」
「……え?棗さんが……?社長に……?」
聖良は驚いたような顔で俺を見つめた。
「ああ。……俺が親父の跡を継いで、社長になるよ」
「はい。……おめでとうございます、棗さん」
聖良は優しく微笑むと、俺の手を握ってそう言った。俺も聖良の手を握り返した。
「ありがとう、聖良。初めてのことばかりで不安もあるが、俺のことをこれからも支えてくれると嬉しい。……俺には今、お前だけだから」
「はい。わたしに出来ることがあれば、何でも言ってください」