【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「聖良、ムリして俺を社長と呼ばなくていい。いつも通り名前で呼んでくれて構わないよ」
そんなわたしを見て、棗さんは優しく頭を撫でながらそう言ってくれた。わたしは嬉しくて、心がドキッとして。そして感動した。
棗さんのこの優しさは、世界一だと思う。こんなに素敵な旦那を持ったわたしは、本当に幸せなんだなって思う。
「……棗、さん」
「よし、行こうか?聖良」
「……はい」
わたしたちはお父様の手術の時間が近づいたため、病院へと向かった。
「親父」と棗さんが病室へと入ると、お父様は「棗、聖良さんも……。来てくれたのか?」と顔を向けて言った。
「親父、これから手術だろ?……頑張れよ」
「お父様、頑張ってください。……これ、渡したくて」
わたしはお父様の手術が成功するように、お父様にお守りを渡した。そしたらお父様はそれを受け取ると、優しく微笑んで。
「……ああ、ありがとう。ふたりとも……」
優しくそう言った。