【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「そうか。何かほしいものができたら、遠慮なく言ってくれ」
「あ、はい……。分かりました」
「それと、記念日にレストランを予約してある。一緒に食事をしよう」
「え?」
棗さんが、レストランを予約してくれてるの……?記念日だから?
「せっかくの記念日だ。ふたりで楽しもう」
「……はい。ありがとうございます」
わたしは棗さんと結婚してから、色々なことが変わった。結婚して幸せだったか分からなかったけど、今は本当に幸せだと思う。
正直に言うと。わたしは棗さんと結婚しても、棗さんとは分かり合える気がしなかった。……鷺ノ宮棗の妻としてやっていける自信がないって、ずっと思っていた。好きで結婚した訳じゃないから、分かり合えるとは思っていなかったけど……。
このままこの先、ちゃんとした夫婦になれるとも思っていなかった。棗さんだってわたしのことを、本気で愛しているなんて、結婚したばかりの時は思ってもいなかった。