【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……はい。鷺ノ宮です」
それから何週間か経った時のことだった。棗さんのスマホに誰かから連絡が入ったようだった。
「……え?それは本当ですか?……はい。分かりました。すぐに行きます!」
電話を切った棗さんは、慌てて出かける準備を始めた。「棗さん……?どうしかしましたか?」と声をけると、棗さんは「病院からの連絡で、親父の容態が急変したらしい」そう言うと、上着を羽織り、車の鍵を持った。
「……え?」
「親父の所に行く。聖良も来い」
「はい!」
わたしたちはすぐに家を出て、急いで病院へと向かった。車を走らせる棗さんのその横顔は、とても不安そうで……。そして動揺しているようだった。
まさかお父様の容態が急変するなんて……。手術がうまく行っても、やはり転移するリスクがあると医者からは言われていた。だからこそ、この時がきたんだなと、わたしたちは悟ってしまった。
お父様がどうか無事でいてくれることだけを祈るしかなかった。