【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「すいません!連絡を頂いた鷺ノ宮です!……あの、親父は……?」
病院に着いてすぐ、わたしたちはナースステーションでお父様の病室を聞いた。
「鷺ノ宮さんのご家族ですか?……病室はこちらです。ご案内します」
看護師に連れられ、わたしたちは病室へと向かった。……その足取りはとても重くて、不安と緊張、そして悲しみが溢れそうだった。
「……親父?」
病室に入ると、お父様は人工呼吸器に繋がれ、眠ったままの状態でベッドに横たわっていた。棗さんはお父様に近づいて、「親父?」と話しかけた。
「……あの、親父の状態は?」
「はい。鷺ノ宮さんは、自宅で倒れたようです。実は1時間ほど前に、救急に運ばれてきたんですが……。詳しい検査をした結果、肺と肝臓にも、ガンが転移してることが判明しました」
医者は静かにそう言うと、目を伏せた。棗さんは、驚いたような表情で、お父様の顔を見つめていた。
「……親父は、大丈夫なんですか?」