【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「そんな……。どうにかならないんですか?」
棗さんはお父様の手を握って、先生にそう問いかけた。
「……今の段階では、難しいです。もちろん薬での治療も出来ないわけではありません。ですが、お父様のご年齢を考えると……」
先生は申し訳なさそうにそう口にした。
「……そんな。じゃあもう……。親父は……」
「できる限り、最善は尽くします。……ですがわたしたちにも医者にも、治療の限界があります。……どこまで出来るかは、分かりません」
「……先生、親父は、あとどのくらい生きられますか?」
棗さんが震えた声でそう先生に問いかけると、先生は一言こう言った。「もって2ヶ月です」
「2ヶ月……?」
そんな……。お父様の余命は、あと2ヶ月……?お父様のあの時の笑っていた顔が、忘れられない。あの時、嬉しそうに笑っていたあのお父様の笑顔が、もう見れなくなるかもしれないなんて……。
そう思うと、わたしは涙が止まらなかった……。