【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……でも」
「俺なら大丈夫だ。それよりも聖良に何かあった時の方が心配だ」
「……ありがとうございます。棗さん」
棗さんの優しさが嬉しくて、泣きそうになってしまった。
「……聖良、泣くな」
頭を撫でてくれる棗さんは、優しくそう言ってくれた。
「棗さん……」
だけどわたしはこの異変に、心当たりがあった。何日か前までなんにも感じず大丈夫だった炊きたてのご飯のニオイ。そしてさっき、炊きたてのご飯のニオイで気持ち悪くなった。
もしかしてわたし……。そう思って、そっとお腹に手を当ててみた。
まだ実感なんてないし、本当にそうなのか分からない。だけど、だけど……。知りたかった。
「今日はゆっくり休むといい。夕食はどこかで済ませてくるから」
「ありがとうございます……。お仕事、頑張ってください」
「ああ。じゃあ行ってくる。ちゃんと休むんだぞ?」
わたしは「はい」と笑って返事をし、棗さんを見送った。