【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「ありがとう……。聖良」
「え……?」
「俺本当に嬉しいよ。……聖良に子供が出来たって聞いて、すごく嬉しい。俺父親になれるのか?すげえな……。幸せだよ」
「棗さん……。わたし、生んでも、いいんですか?」
「何言ってるんだ。当たり前だろ?だって俺たちの子供だぞ?」
わたしは棗さんの言葉に涙が止まらなくなった。棗さんが喜んでくれてると知って、安心したのもあるし、何より嬉しいって思ってくれているのが、わたしには嬉しかった。
「……っ……はい。そうですね」
「親父もきっと、喜んでくれてると思う。……孫の顔、見せる前に死んでしまったが。きっとすごく喜んでくれてると思う。生まれたら、子供の顔を見せてやらないとな?」
「……はい。そうですね」
棗さんのその言葉を胸に、わたしはこの日、元気な赤ちゃんを生もうと決めた。正直生むかどうか迷うこともあった。……だけどこうして授かった新しい命を、わたしたちは絶対に大切にしていきたいと思った。