【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
リビングに戻ると、聖良が俺に声をかけた。
「あの……。お願いがあるんですが……」
聖良は少しだけ遠慮がちにそう言った。
「なんだ?言ってみてくれ」
「……その……グレープフルーツゼリーと、きゅうりの漬物が食べたいんですけど……」
「分かった。では家政婦に買ってきてもらうように頼んでおこう」
「……あの、ありがとうございます」
「気にするな、聖良。食べたい物やほしいものがある時はなんでも、遠慮なく言ってくれて構わないよ」
そう言って俺は、聖良の頭を撫でた。聖良は嬉しそうに笑って、「ありがとうございます」一言そう言った。
俺は家政婦に来る途中でグレープフルーツゼリーときゅうりの漬物を買ってきてくれと頼み、一度寝室へと戻った。
今日は久々に仕事が休みだ。しかし休みだとはいえ、家でもやることがあるから、休みがないようなものだ。新しい事業を始めようとも思っていたが、今の仕事で手一杯で他に何も手につかない。