【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「はい。……早く、赤ちゃんに会いたいです」
聖良はお腹に手を当てながらそう言うと、優しく微笑んでいた。その微笑む姿は、もうすっかり母親の顔になっていた。
「聖良はきっと、いい母親になるさ」
「そうですか?……わたし正直に言うと、ちゃんと母親になれるのか……。とても不安です」
「大丈夫だよ。俺なんてまだ、父親になるって実感がまだない」
赤ちゃんが出来たというのに、父親になるのだという実感もないし、本当に赤ちゃんが聖良のお腹の中にいるのか不思議でたまらない。まぁお腹がまだぺったんこだからだとも思うが……。
「棗さんは、正真正銘ちゃんとこの子の父親です。この子はわたしたちにとって、初めて出来た赤ちゃんです」
聖良はそう言うと、俺の手を掴んで聖良のお腹に手を当ててくれた。聖良のお腹に、ちゃんと赤ちゃんがいるんだな……。信じられない。だけど俺にもちゃんと分かる。赤ちゃんがいるって、どれだけ嬉しいことなのか。