【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
棗さんはわたしの手を取って、そして言葉を続けた。
「俺にも聖良という大切な妻と、そして新しい家族になる子供がいるんだってことを、お袋にも自慢してやりたいんだ。……そしてお袋を安心させたい」
「……素敵だと思います。棗さんのその気持ち、わたしにも分かります。もしわたしが棗さんの立場だとしたら。……きっと同じことを思うと思います」
「……聖良、ありがとう」
わたしがそう言うと、棗さんは優しく抱きしめてくれた。わたしも早く赤ちゃんが出来たこと、ちゃんと両親にも言わないとなぁと、心から思った。
まだ安定期には入ってないけど、わたしはその日お母さんに電話した。早く赤ちゃんが出来たことを伝えたくて……。安心してほしくて。
「もしもし……。お母さん?」
「聖良?どうしたの?」
「あのね。ちょっと伝えたいことがあって」
「なんだい?」
「……お母さん。わたし、棗さんとの間に赤ちゃんが出来たの」
「え?それ本当なの?」