【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜




 「……ありがとう、母さん。母さんに会えて良かった。実はずっと言えなかったんだが……。母さんと親父が離婚してから、親父は俺にキツく当たるようになったんだ。母さんに会いたいと言ったら拒絶された、ダメだと。……それを言うのはきっと、俺をいい息子に育てたいからなんだっていうのは、子供ながらに気付いていた。……今思うと、母さんがくれていた愛情を、親父も同じようにくれようとしたのかもしれないな」

 棗さんの言葉に、胸がギュッと締め付けられるのが分かった。……気が付いたらわたしの瞳から、一筋の涙が零れ落ちていた。それはわたしだけでなく、お母さんの目にも同じように涙が伝っていた。
 
 「ごめんね……。棗……本当にごめんね……」

 そして一言だけそう言うと、大粒の涙を溢した。わたしもそれを見て涙を堪えることが出来なくて……。一緒に涙を流した。

 「……母さん、俺は今すごく幸せだ。……俺を生んでくれて、本当にありがとう」

 「棗……」


 
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