【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……棗、元気でやるのよ。必ずまた、赤ちゃんの顔を見せてね?」
「ああ。……母さんも、体に気をつけて頑張れよ。幸せでいろよ、ずっと」
「……ええ。棗、あなたもね」
「……ああ」
「じゃあ行くわね。……じゃっ」
棗さんのお母さんは、優しく微笑んでその場から歩いてラウンジから消えた。そんな姿を見届けながら、棗さんは少しだけ悲しそうにしていた。
「……棗さん」
「行こうか、聖良」
「……はい」
棗さんの後を追うように、わたしは歩き出した。……棗さんはきっと、ずっと前からお母さんに会いたくて仕方なかったんだな。だけどお母さんに会わせてもらうことも出来なくて、寂しい思いをしていたんだろうな……。
そんな棗さんのわたしが少しでも埋められるのなら、わたしはずっと棗さんのそばにいたい。家族になるんだから、わたしたちは。
「……棗さん」
「ん?」
「……わたしがずっとそばにいます。もう、寂しくないですよ?」