【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜


 どこか複雑だった。そう言われて嬉しいはずなのに。心のどこかがチクリと針が刺さったように痛いのはきっと……。

 わたしたちが偽りの夫婦だからだ。ちゃんと分かりたいたい。そう思うこともあるけど。

 結局わたしたちは、愛のない偽りの結婚をした偽物の夫婦だってことだ。……その事実はどこからどう見ても変えられない。

 バカだなと思うけど。どうやってもその気持ちは消せない。消すことができない。

 「……聖良。無理にじゃなくていい。俺のことをまだ嫌いでも構わない。だけどそんな顔するな」

 「え……?」

 「俺はお前に、そんなに悲しい顔をさせたい訳じゃないんだ。……ただ素直に、笑っていてほしいだけなんだ」

 「笑っていてほしい……?」

 そういえばわたし、棗さんと結婚してから笑った記憶がない。いつから笑ってないんだろう……。

 それが棗さんの願い、希望だと聞いて。だけどそれを聞いて、なんだか少しホッとした自分もいて……。



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