【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
棗さんは申し訳なさそうにそう言った。
「いえ、謝らないでください。その気持ちだけでも充分嬉しいですから」
「ありがとう、聖良。……ただ育休は取れないが、しっかりと一緒に赤ちゃんを育てていきたいと思っている。出来る限りできることは、なるべく協力していきたいと思っている」
棗さんのその力強くて優しい言葉が嬉しくて。わたしも「ありがとうございます」と言った。
お腹の赤ちゃんがその言葉に反応するかのように、動くのが分かった。赤ちゃんもきっと、パパとママに早く会いたいって言ってくれているみたいで、すごく嬉しかった。
それからしばらくしてからも、検診では特に問題もなく、赤ちゃんは順調に育っていた。そして臨月を迎えたある日。
自宅で夕食を作っていた時。急にお腹が激しく痛み出した。あまりにも痛みが強すぎて、その場にしゃがみ込んでしまった。
いった……。いたたっ……。わたしはその場から動けなくなってしまい、スマホを取りに行くことも出来なかった。