【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜




 「い、いえ……。そばにいてくれるだけで、今は嬉しいです……」

 ずっと腰を擦ってくれる棗さんは、優しく手を握ったままそばにいてくれた。

 「もう少しだ。……頑張れ、聖良。俺が付いてる」
 
 「っ……はい。ありがとうございます」

 それからどれくらい経っただろうか……。前にも増して、間隔が変わったような気がした。調べると、陣痛の間隔が2分くらいになってきた。

 そろそろだと思い、ナースコールで先生を呼んだ。先生は子宮口を確認すると、「うん。子宮口かなり開いてきたね。出産準備に入ろうか」そう言って準備を始めた。

 助産師さんも来てくれて、助産師さんの指示でいきんだり緩めたり、すごく大変で。激しい痛みに襲われて、何度も泣きたくなってきた。

 またいきんでと言われ「はぁぁっ……!」いきんでいく。そんな姿を見て、棗さんも一生懸命「頑張れ!聖良!もう少しだ!」そう言って励ましてくれた。

 だからわたしも、棗さんの声に応えたくて。一生懸命赤ちゃんを生もうと頑張った。



< 260 / 264 >

この作品をシェア

pagetop