【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜



 「……棗、さん?」

 意外だった。まさか棗さんがそんなことを言うなんて。信じられなかった。ウソみたいだと、何回思っただろうか。

 「そうか。よかったな。お前もようやく一人の男としての幸せを掴んだのだな」

 「はい。……言っておきますが、俺は社長、あなたみたいにはなりませんから」

 わたしには、社長に対してなぜそんなことを言うのか分からなかった。……あの言葉は、一体どういう意味なんだろう……。

 「そうか。まぁ期待してるぞ」

 「……俺は結婚式で、社長。そして聖良の両親に誓いました。聖良のことだけを一生愛することを。なので俺は、あなたみたいにはなりません」

 「……本当に、口だけは達者になったもんだな」

 「俺はあなたと同じことを、妻にしたくない」

 「……そうか。所で棗、新事業を始める予定なんだったな?」

 「はい。化粧品ブランドの夕来社長と提携することに決めました」

 「そうか。まぁ頑張れよ」
 
 「はい。言われなくても、頑張りますよ」



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