【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「本当に頼もしいね、聖良さんは。これからも棗のことを、よろしく頼むよ?」
「……はい」
「では、失礼致します」
わたしたちは社長を出ると、話し合ってそのまま家へと帰宅することにした。
帰宅したのは夕方17時半すぎだった。キャリーバッグをリビングへ置いて、わたしたちはソファに腰掛けた。
棗さんはソファに座りながら、わたしの手を握ってきた。驚いたわたしは、棗さんの顔を見上げるように見た。
「……聖良、ありがとう」
「え?……何がですか?」
「さっき。フォローしてくれて、ありがとうな。嬉しかったよ」
「……いえ。妻として答えただけですから」
そう。わたしは鷺ノ宮棗の妻。鷺ノ宮に嫁いできた身。嫁に迎え入れてくれた以上、出来ることならわたしは何でもやるつもりだ。
それが妻としてのわたしの、出来ることならば。わたしが棗さんの妻になんて相応しい訳はない。……でも偽りで手に入れたこの幸せも、わたしの人生だから。