【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
どうしようかと考えていた矢先、出た答えは1つ。実家に帰ることだった。
だけど出来ることなら、実家には戻りたくはない。父親に断固反対されて、それでもどうしてもコンシェルジュになりたくて、わたしは父親の反対を押し切ってまで、東京という街に出てきたのだ。
今更実家に戻りたいなんて言った所で、認めてくれるのだろうか……。お母さんはいつでも戻ってきていいからねと言ってくれているけど。
やっぱり父親はきっと、それを認めてくれないだろうな……。
言われるのはきっと、もう田舎で結婚して幸せに暮らしなさい。に決まってる……。
そんなのはイヤだ。だけどそうするしか道がないかもしれない。わたしにとっての、一番の道筋。
そう思ったその時だった。
「……なあ。お前が波音(なみね)聖良(きよら)か?」
そう誰かに声をかけられた。
気になって声の主の方に振り返ると。……目の前には長身ですらっとしたスーツを着た男性が立っていた。