【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜



 だけどわたしには、その言葉の意味が分からないから。信じてもいいのか分からない。

 とりあえずわたしは、適当に服を選び、すぐに出掛けられるように化粧もした。棗さんと結婚してから、あまり化粧をしなくなったのは自分でも分かっていた。 

 コンシェルジュとして働いていた時は、毎日メイクをしていたし。コンシェルジュとして働いている時はとても楽しかった。お客様の喜ぶ顔が見れるたびに、この仕事をしていてよかったって思った。

 今はメイクをしなくなった分、肌の調子はいい方だと思う。だけどわたしは、棗さんからキレイだと言われたこともない。……きっと妻として見てくれている訳ではないということだと思う。

 きっとわたしを抱くのだって、夫婦としての儀式みたいなもので。夫婦になったんだから、わたしは棗さんに抱かれるのが当たり前なんだろう。

 きっとわたしのことを好きで抱いているわけじゃない。夫婦として当たり前の行為だから、抱いているに違いない。


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