【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
【お互いの理解への関心】
「……え?」
「俺たちはお互いにお互いを、何も理解出来てないと思った。だから少しでも距離を縮めたくて」
「……そんな。なんか、すみません」
わたしが棗さんに対しても、鷺ノ宮家に対しても、あまり心を開こうとしないから……?
なんとなく、そんな考えが頭に浮かんだ。
「気にするな。お前のせいじゃない。……ずっと考えていたことだから、気にするな」
「……はい」
「さ、まずは乾杯しよう」
「はい」
棗さんは小さく微笑むと、運ばれてきたシャンパンをグラスに注いでくれた。そしてお互いにグラスを交わして乾杯をして、シャンパンに一口口を付けた。
シャンパンのほのかな香りと、風味が口いっぱいに広がった。それは今まで飲んできたのものと全然違くて。こっちのほうが断然美味しい。
「どうだ?」
「美味しいです。……こんなに美味しいシャンパン、初めて飲みました」
「そうか。それはよかった。最高級品のシャンパンをセレクトしてもらった」