【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜



 「……聖良」

 「はい」

 観覧車が頂上につく頃に、棗さんがわたしの隣に来て、名前を呼んだ。

 「……聖良、俺の妻になってくれて、ありがとう。いつも感謝している」

 「……いえ」

 どうしてそんなことを言うのだろう……。棗さんはわたしに優しくしてくれて。そしてこうして感謝の気持ちまで伝えてくれている。

 「聖良、お前は俺の妻だ。一生愛してやる」

 「……はい」

 だけど時々、こうして強引にわたしに言葉をぶつけてくる。強引なのに、その言葉にわたしの心は揺らいでしまう……。

 彼の気持ちを知って、嬉しくないわけではない。だけどその気持ちの真意が分からないまま、彼と一緒にいるなんて、わたしは……。

 「……聖良、好きだよ。これからも俺は、君のことを妻として、一人の女性として愛していきたい」

 「棗さん……」

 棗さんは、わたしの頰を撫でながらそう言うと、そのままわたしの唇に甘くて、でも優しいキスを落とした。

 
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