【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……よかったです」
そう言ってもらえると、作った甲斐がある。
「聖良が俺の妻で、本当によかった」
「……そんな、大げさですよ」
料理ひとつでそこまで言ってもらえるとは、思わなかった。
「俺にとっては大げさなことではない。家に帰ったら妻が料理を作って待っててくれるなんて、俺にとってはありがたいことだ。……お前の料理を毎日食べれるなんて、俺は幸せだと思っている」
棗さんが真剣な顔でそう言うから、わたしは何も言えなくってしまった。……どうして、どうして。棗さんはわたしを困らせるようなことを言うんだろうか……。
わたしのことを好きだと言ってくれたことは嬉しかった。その気持ちが伝わってくるから、とても嬉しい。……だけどわたしの気持ちは、まだ棗さんの同じじゃない。だからこそ、胸の奥が痛くて、切なくて……。
「……聖良?」
「棗さん……」
だからこそわたしも、棗さんの気持ちに応えたいと。……そう思った。