【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
目の前にいるその人は、そう言ってわたしの腕を掴み、そのまま唇を塞いで強引にキスしてきた。
「ちょ、ちょっと……。何するの!?」
「これが俺の嫁になる君への、愛の誓いだ。まだ何か文句でも?」
「………っ」
こうしてわたしは、鷺ノ宮グループの御曹司、鷺ノ宮棗(さぎのみやなつめ)と愛のない、偽りの結婚することになった。
「棗さん、おかえりなさい」
「ただいま、聖良」
「カバン、預かります」
「ありがとう」
棗さんからカバンを受け取ったわたしは、リビングにカバンを置いた。
そしてふと目にする、わたしたちの結婚式の写真。ドレスに身に纏ったわたしと、タキシード姿の棗さんが、笑っている。
だけどその笑顔だって偽物。だってわたしたちは、偽りの夫婦。嘘で固められた偽りの結婚生活。
こんな生活を、誰が望んだだろうか……。その写真に映っている笑顔も、全部ウソで固められている。