【超短編 26】 もぐら戦車
どこまでが本当なのか全くわからないが、「もぐらが新しく開発した」というのは何かの間違いに違いない。
 もぐらはそんな戦車を使わなくても地面をいくらでも掘れるからだ。それとも、そう思っているのは僕だけでもぐらは土を掘るなんかできないのだろうか。
 田舎に住んでいた友人は実際にもぐらを見たことがあるらしいが、ずっと東京に暮らしている僕はもぐらを見たことがない。もぐらは地面を掘るよりも戦車を開発するほうが得意なのだろうか。そもそももぐらは土を掘る才能があるという知識を僕につけたのは一体誰だったのかが思い出せない。幼稚園の先生か、母親か、もしくはどちらかが読んでくれた絵本の中の話だったのかもしれない。
 絵本の中の話だったらフィクションである可能性も高い。子供のころ鵜呑みにしていたまま過ごしてきたのかもしれないが、もぐらが鉄鋼業を営んでいる話も今まで聞いたことがなかった。
 記事の後ろの方には、最近テロリストが東京に潜伏していて地中にもぐら戦車を張り巡らしているとも書いてあった。地下からミサイルを打つ気なのか、地震を起こそうとしているのかはわからないが、本当だったらどちらも大変な惨事に見舞われることになるはずだ。もしかしたら、僕の家も潰れてしまうかもしれない。
 僕は、空腹を満たして一息つき、タバコに火をつけながら思った。
 コンビーフは取っておくべきだった。
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