きっかけのさよなら。



"それだけ、真剣だった"


出会ったばかりなのに、私の心をみつめてくれている真摯な言葉が、胸に刺さった。


まるで、以前から相談にのってくれていた人みたい。



「…まさか、全部お見通し?勘よすぎない?」


「まさか!さすがに全部わかってたら怖くない?」



「確かに、そうだけど…」


彼との数年分の事情を知っているかのように言うから。笑いをこぼす年下の男の子に、なんだかタジタジだ。



「何があったかまでは分からないけど、それだけの想いがあったことは確かだと思って。

違った?」



心のまた奥にある心を、受け入れ理解してくれようとしている瞳に出会って、何かが溶かされていくみたいに、私のそれが顔を出す。


ゆるんでしまう感情に、瞳を逸らして、今はもう付くことのないイルミネーションをみつめた。



「…大好きな彼とね、別れたの」


「…うん」



本当は、言うべきじゃないってわかってる。

数分前に出会った男の子。
年下らしい男の子。

仕事中なはずの、男の子。


私が、イルミネーションが消えた後も、いつまでもくよくよして帰らないせいで、男の子達の仕事が進まないから、声を掛けてくれただけなはずなのに。



「大学時代から付き合ってて、今年で2年目。

春からお互い社会人になって、次第に連絡の頻度も会う時間も回数も少なくなっていって。
…予感はしてたの。

でも、忙しいからだと信じたかった。
ゾーンを抜けたら、今までの2人に戻れるって」



やさしい男の子のことを思えば、はやく立ち去ってあげなきゃいけないのに、するりと心の奥にある想いが流れていく。



「…もう、私に会いたくならないんだって。

私はまだ、こんなに会いたいのにね」



彼にはもう、言うことのできない想い。


聞かされても困るだけだと思うのに、それでも、名前も知らない男の子は、そっかと。


代わりに聞いてくれた。
私に、言わせてくれた。


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