私、身代わり妻だったはずですが。
和志さんはそう言ってコーヒーを一口飲むと「もう怒ってるかも」と呟くと見たことのない笑顔を見せた。千咲のこと考えてるんだろうなぁ。
やっぱり敵わないなぁ……。
「俺ね、心咲ちゃん」
「は、はい」
「もう隠しきれないので言います」
……?
和志さんは背を正してから真剣な顔をして、目を合わせた。
「俺は、心咲ちゃんが好きです」
「……ぇ、今なんて言いました……?」
今、和志さんが私のこと好きって……空耳、かな。
だって和志さんには千咲がいるんだもん。千咲が居なくなってもきっと、彼女のことを愛してるんだから。
「心咲ちゃんが好きだ」
「え……? 私が、ですか? でも……千咲と」
千咲と愛を誓い合った人だ、私が好きなんて一時の迷いに決まってる。
「……俺と千咲は夫婦ではない。婚姻関係は一切ない」
「どういうことですか……婚姻関係がないって」
「千咲が亡くなる一週間かな、その時俺と千咲が一時外泊したの覚えてる?」
「あ、はい……千咲がとても喜んでいて」
その日は和志さんと行きたい場所あるんだって出かけて行ったんだよね。でも、それと何が関係あるんだろう?