私、身代わり妻だったはずですが。


 今から1年前━︎━︎……姉の千咲が死んだ。
 ガンだった、見つかった時にはもう末期でその場で余命宣告された千紗は1年の闘病生活を病院で過ごした。


『……心咲、また来てくれたの? ありがとう』

『お礼なんて……家族なんだから当たり前じゃん』

『でも、仕事で疲れとるだら? 休まんと……体が保たんよ』


あれは、彼女が亡くなる数日前だっただろうか……千咲は自分があまり長く無いと悟ったのかもしれない。


『ねぇ、心咲……お願いがあるんだ……聞いてくれる?』

『何……? 私でもできることなら』

『ありがと……あのね、和志のことなんだわ……』


 千咲が声を振り絞り、少しだけ掠れた声で言った。


『和志は……本当は、弱いで支えてあげてほしいの。きっと、心咲の前じゃ強がるだろうけどね』


和志さんは最期まで千咲のそばにいた。在宅ワークに切り替えた彼は片時も離れず、ずっとそばに。

 千咲は幸せだったと思う……和志さんに最期の最後まで一緒にいられて。だけど、彼女のお葬式などが済んだ後……彼は言ったんだ。


『……千咲? 帰って来たんだねっ』


私にそう言った。だから私は『うん、そうだよ……』と答えてしまって……それから千咲として、生きている。






 






 








 
 
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