私、身代わり妻だったはずですが。
千咲のことを考えながら、私はお風呂から出て和志さんがいるリビングへ向かう。しっかり、彼との“結婚指輪”をつけて。
「和志さん……? あれ?」
リビングに戻ると、彼の姿がない。トイレかな?
「千咲、ここだよー……明日休みだよね? ワイン飲まない?」
「え……? 休みだけど」
今日って何かお祝いごとあったかなぁ……?
「大きい商談が通ったんだ、だからお祝い」
「え、そうなの!? おめでとう!」
和志さんはお酒が大好きで特にワインが好きらしく……彼専用のワインホルダーがある。生前、千咲も『和志はワインが大好きで〜』って言っていたくらいだ。
「だから、今日はローストビーフ作ってみたよ。お肉奮発したよ〜」
「えっ! 和志さん、すごい……お店みたいだね」
「うん、頑張っちゃった。さ、食べよ食べよ〜」