きみの手のひらで、僕はおどる。
間違いなく満ち足りていくしあわせに、たまらず心は踊っていたけど。
それでもあえて、足りないと言おう。
たった46文字から月が選んで紡ぐ言葉に、こんなにも動かされてしまう僕は、男らしくはないのかもしれない。
でも。そんな僕といるきみは、たのしそうで。
僕たちは、これでいいんだと知る。
「もう、星は欲張りだね」
「月が、僕をそうさせるんだよ」
きみのかわいい軽口をきけるのならば。
きみが笑ってくれるのならば。
いくらだって、踊ってみせよう。
近づいてくる小さなくちびると、
窓の外には満天の星。
月を飾るように星が散りばめられていて、その光景に僕らをかさねた。
そう、僕はきっと。きみをトクベツなものにするためにいるんだと。
しあわせを受け取りながら、思った。
【きみの手のひらの上で、僕はおどる。】
ーー きみをトクベツにするのは、僕だけで。
-end-