きみの手のひらで、僕はおどる。
仕方なくiPhoneを差し出す僕に、天使のような微笑みを返してまた少しとおくに行くきみは、どこにいきたいのだろう。
付き合い立ての僕らは、春から冬と。季節を一周もしていない。それなのに、もう飽きてしまったのか。
風のように自由に生きるきみは、常にたくさんの興味があって。飛び込んでいける大胆さも持ち合わせているから、可能性はなくはない。
そう思ったら、居ても立っても居られなくなって。つかまえておかなければと思ったから、抱きしめたのに。
他に、どんな術があるのだろう。
彼女が待てというならば、どっしりと構えておけばいいのだろうか。
彼女しか知り得ない答えを、誰に聞くこともできずに。やるせない気持ちを、闇に浮かぶ下弦の月に問いかけた。
「こっちにきてよ、星」
数分前に僕がいった言葉。
真似るように音にしたきみを振り返ると。うるおいと無邪気さと、知性を兼ね備えたその目を、弓なりにしていて。
あぁ。結局僕は、彼女の手のひらの中にいるのかもしれないと、思った。