きみの手のひらで、僕はおどる。
こっちにきてと言いながら、迷いなく近づいてきた彼女は、僕の手をとった。
Shall We Dance?
いつかみた映画のワンフレーズが似合いそうなほど、軽やかに。
冷たさを帯びていた彼女の指先も、僕の体温をまとって次第にとけていくように、ぬくもりを知っていく。
こんな些細なことで、じんわりとした幸せを感じてしまう僕は、なんて単純なんだろう。
僕も、きみをトリコにしたいのに。
「一体どうしたの、月」
「いいから、とにかくここに座って?
あとこれつけて。はいっ」
連れていかれたのは、ベッドの上。
誰も足跡をつけていない雪道みたいにまっさらで、ふわふわなそれ。
「えっ、なにする気…?」
いたずらに見せられたのは、アイマスクで。
「ほら、動いたらつけられないよ?
正面むいてすとっぷ!一時停止です」
驚く隙もあたえずに、くるりと僕のうしろにまわって動きの主導権をにぎった彼女は、なめらかに視界をうばった。
アイマスク越しになぞる彼女の指先は、オトナの匂いがする。