きみの手のひらで、僕はおどる。
視界が覆われていても、感覚で、部屋の照明が落とされたのがわかる。
日常以上に、彼女がうごく気配、うごく音。スイッチの音やお互いの息をすってはく音が、立体的にきこえる。
それは、どくどくと波打つ心臓のおとも、おなじ。
心臓は僕のなかにあるはずなのに、そうに決まっているのに。あたりまえのことなのに。
今は。
心臓のなかに、僕が入ってしまったみたいだ。
「…とるね」
どこかに離れていた彼女の存在をすぐ傍にかんじて、僕をむすびつけていた拘束がとかれる。
まぶたを押し上げながら、ゆっくりとかたちになっていくヒカリに、僕は目をみひらいた。
「えっ…」
ことばを失う。
そのことばの意味を、まるではじめて知ったかのように。ことばが出なかった。
「お誕生日おめでとう、星」