きみの手のひらで、僕はおどる。



「なに…これ。いつの間に…?」



アイマスクを外して瞳をあけて、視界にゆっくりと広がっていったのは、写真家の月がカメラにおさめた写真たち。


付き合いはじめてから今日まで。
プライベートな僕らの姿だった。


仕事でもなんでもない、ただ、しあわせな瞬間たちが、アルバムをめくるように。

閉じられたカーテンに、フィルムが映しだされていく。



きみがはじめて僕の家に泊まりにきた日の朝、こっそり隠し撮りをされていた寝起きの写真とか。


不意打ちで、頬にキスをしてきたときに切り取られた写真。


僕の上着をきみにかけたときに思いのほかぶかぶかで。それがすごく愛おしくて。かしてと、きみのカメラで僕がとったきみの写真まで。




「なかなかムーディーにできたでしょ?

大事な星がうまれた、大切な日だから。
なにかしたくて。

私にはやっぱり写真かなって思って、張り切ってみちゃいました」



ど?


そう、少し恥ずかしそうにわらうきみは、ごめんと舌をだしてわらう見慣れた姿のきみより、何倍も。何十倍も、かわいい。

大げさではなく、世界がとけてなくなりそうだ。





奥底からこみあげてくる感情に、衝動的にきみを抱き寄せた。



「ありがとう」


きみにとっては、突然のことで。

小さく驚きの声をもらしたけれど、ぎゅっと、僕の腕をつかんで応えてくれる。



「うまれてきてくれて。
私に出会ってくれて、ありがとね。星。


だいすきよ」



僕の腕の中で顔をうずめるきみを感じて、思う。


すきだと。



あふれでてくる愛おしさにみちびかれて、彼女と同じ目線へと寄せる。


うるんだ瞳の中には、たしかに僕がいて。

僕だけをみている。



「…僕の方が、きっとすきだ」



ささやくように告げた僕に、きみはくすりとわらって。

その、上がる口角を追いかけるように、小さなあかい唇にふれた。


僕ときみとはすぐに同じ温度で。

心地よさを噛みしめるように瞼を閉じた。



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