きみの手のひらで、僕はおどる。
「てっきり、捨てられるのかもと思ったよ」
一周目のショートムービーをすっかり見逃してしまい、仕切り直して味わいたいなと。
和んでしまったベッドに寝転がりながら、ローテーブルに置かれたチャンネルに手を伸ばした。
僕の位置からは少し距離があって、体を起こさないと届かないかと。諦めて僕が動くより先に、腕の中で月がうごいた。
「捨てられる?なにが?」
「僕が。きみに」
ん。と振り向いてリモコンをくれるきみとの間で、指を運ばせてのジェスチャー。
僕がリモコンを受け取っても、ぽかんとしていた彼女が、ふいに笑いだした。
声をあげてけらけらと。
「なんでよ!絶対ないのに」
絶対ない。きみにそう思ってもらえていたことが嬉しい反面、僕の不安ほど、きみには大したことじゃないと思われている気がして。ムッとしてしまう。
「iPhoneに捉われすぎてるからさ。その向こうに新しい彼氏でもいるのかと思ったんだ」
男らしくない、女々しいことをいっているのはわかってる。それでも言ってしまった。
僕の腕の中にいた彼女がくるりと振り返って。心を探るように目が細くなっていくその姿は、あからさまに不満を抱いている。
「私が、平気で浮気する人にみえてるってこと?」
「え、いや…え?」
言われて気づいた。
そういう側面もあるんだと。
彼女は自由でチャーミングな上に、好奇心まで旺盛で新しい出会いも日々あるから、僕以外に目が向くことも多い。
僕以上に魅力的なひとに気づく機会は、いたるところにあるから。
だから、僕を1番に選ばなくなる日もくると。
時に鼻歌まじりにiPhoneに向かう姿をみて、そんな風に、思ってたんだ。
「ウソ。確かに私、iPhoneばっかりだったもんね」
「…一体なにを、あんなに夢中になってやってたの?」
けれどもそれは、自信のなさから彼女のことを深く知ろうともせずに、決めつけていただけなのかもしれない。
真実を問うと、"バレちゃったらかっこつかないから言いたくなかったんだけどな" と、きみが口を尖らせて。
そして、わらった。
「準備だよ?ショートムービーの設定とかさ。
だけど、一番大事なこと、大事にできてなかったよね。目の前にいる星のこと、みれてなかった」