偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
正直、その話はもういい。俺についての夢物語を聞かされるのはごめんだ。彼女がうれしそうにすればするほどなぜか俺は陰鬱とし、腹が立ってくるのだ。
聞きたくなくて適当に受け流そうとしたが、彼女は強い瞳で続きを話す。
「もしも冬哉さんが私を好きじゃなくても、私はなにも変わりません」
「……え?」
その答えは俺の予想していたものではなく、まったくピンと来なかった。
「私は冬哉さんが好きです。でもそれは、冬哉さんが私を好きでいてくれるからではないんですよ。冬哉さんが私のことを嫌いになってしまっても、私の気持ちはきっと変わりません」
――は?
腕の力が抜けていく。
「あ……もちろん、嫌われてしまったら悲しいですが」
ヘラヘラと笑う凪紗をいったん離した。