偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

高層ビルの3D画像をカーソルで動かしている。
邪魔にならないよう音を立てずに黙って立っていたが、すぐに左の黒いモニター越しに目が合い、「よく眠れたようだな」と声をかけられた。

「……はい。あの、お洗濯していただいてありがとうございました」

「相変わらず呑気だな」

彼は不機嫌そうに吐き捨てて、立ち上がる。

「朝食はラウンジに行くぞ。お前とふたりでここに缶詰めになっていると、俺まで頭がおかしくなりそうだ」

叱られた。怒られるポイントがよくわからず萎縮するが、ハンカチだけを持ち、彼の後へ付いてラウンジへと降りた。

庭園の見える広いラウンジに入ると、白いクロスが張られた無数の丸テーブルにはたくさんの人が着席して食事をしている。

空間の中程に空いているテーブルを見つけ、私たちも着席した。
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