偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
唯一の存在
二日が経ち、凪紗をここに連れてきてから四日目の朝が来た。
凪紗は相変わらず逃げようとする様子はなく俺に従順で、控えめになりながらも普段通りに話しかけてくる。
俺はわざと冷たくあしらった。彼女といると、呑み込まれそうになるからだ。
どうせ勇気がなく逃げようとはしないだろうと予想はしていたが、凪紗からはそれ以上の、俺を放すまいとする意志を感じる。
油断していると、まるで軟禁されているのは俺の方なのではという気分になるのだ。
なぜこんな気持ちになるのだろう。凪紗には邪魔をしようという気はなさそうなのに、彼女に対する俺自身の問題ばかりが浮き彫りになった。
俺は凪紗が苦手なんだ。いつも、俺の心に入り込もうとしてくる。
気を抜くと俺の価値観にはない予想外のことを言われるから、それに呑まれずはね除けることで精いっぱいなのだ。