偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
知りたい
一夜明けても、私の口を塞いだ彼が頭から消えなかった。
冬哉さんは、今日も本村さんとビデオ通話をしながら仕事をしている。
扉を閉めてしまえば話の内容は聞こえず、私はひとりきり、部屋のベッドに腰かけて考え込んでいた。
冬哉さんがなにを考えているのかわからない。なぜ私にキスをしたのだろう。
私を好きでいてくれるかなんて、もう、どうでもよかった。否、どうでもいいことはないけど、それ以上に気がかりなことが別にある。
彼の人質になってから、恋人だった十か月間ずっと宙に浮いていた疑問がクリアに見え始めた。
私はいろいろなことを、見てみぬふりをしてきたのだろう。知りたくても、不出来な恋人である私が好奇心で聞くのはおこがましいと思っていた。
冬哉さんが時折、切ない表情を見せることに気づいていたのに。
遡れば、あの日でさえそうだった。
私が冬哉さんに好きだと伝えた日。