偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
『……好きです、私。八雲さんのこと』
お礼の代わりに、咄嗟に本心をつぶやいてしまった。言うつもりはなかったのに。
このときの私は、彼に告白をしたかったのではなく、伝えたかったのだ。
〝あなたのことを知りたい〟と。
このまま冬哉さんのことを知らずにいるのは嫌だった。だから、私の最大の秘密を、咄嗟に彼に告げたのだ。
──あの頃からそう。私は自分のことを冬哉さんに受け止めてもらってばかりで、彼の本心を引き出そうとしてこなかった。
結ばれてからこれまで、私は、あの日の彼が見せた切なさの真実が知りたくてたまらなかったはずなのに、完璧な恋人を演じてくれる冬哉さんを疑うことをやめ、甘えてしまった。
冬哉さんが私を裏切ったなんて、今でも思っていない。悪人だとか善人だとかも関係ないし、善悪など誰にも決められないはず。
ただ、彼をきちんと知ろうせず、自分だけが幸せを感じる付き合い方をしてきたのなら、裏切っていたのは私の方だと思うのだ。