偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
ベッドに上り、枕に向かって縮こまりながら画面を見つめ、食い入るように何度もメッセージを読み返す。
付き合い始めた頃、彼に『ご実家はどちらですか?』と尋ねたことがあった。
冬哉さんは表情を変えずに『幼い頃に両親を事故で亡くして、それからは都内の親戚の家で暮らしていた』と答えてくれたが、当時の私は驚いてしまい、それ以上の詳細を聞くことをやめてしまった。
無知で想像力のない私が彼の傷を広げてしまうのではないかと怖かったのだが、今思えば、もっときちんと知りたいと聞き出せばよかったのに。
そうだったんだ。おじいさん、おばあさんと暮らしていたんだ。
【なにかそれ絡みの私怨があるのなら、こちらも八雲冬哉を揺すれる材料があるかもしれない。引続き調べてみる】
〝揺する〟?
なにも返信をしていないのに、不穏な言葉が次々に並べられていく。