偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─

アキトくんは、冬哉さんの弱みを見つけようとしているのだろうか。過去を探って、人質である私を取り返すための材料にするつもりなの?

心の奥がズキンと痛む。だって、それは冬哉さんを傷つけることになるのではないだろうか。

彼が大変なことをしてしまっているのは私もわかっている。その理由を他人に突き止められて、さらに自分を追い詰めるための道具にされたら、どんな気持ちだろう。

勝手に進められていくことが怖くなり、私は【アキトくん、待って】と返信をする。

【どうした】

【私は、そこまで調べてほしくない。きっと冬哉さんも、そんなやり方で明かされたくないと思っているはずだよ】

返信の早いアキトくんからのテンポのよいメッセージが一度やみ、また呼吸を置いて返ってくる。

【マジで言ってる? このままじゃ、うちの商品が盗られるぞ】
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