偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
いつもは一分ほどで返ってくるが、この問いかけには三分経過している。
もしかして無視をされてしまったのかと思ったが、さらに三分後に、返事は来た。
【凪紗はそれでいいと思うのか?】
……そうだよね。そう思うよね。
実家の会社の看板商品を手離したらどうかと提案するなんて、娘として間違っている。
そんなことになるのを私だって望んでいるわけではない。でも今は、金森の立場で冬哉さんの味方をできるのは、私しかいない。
話も聞かず、頭ごなしに拒否をする気になれないのだ。
【わからない】
【こんなことを言いたくないが、話を複雑にしているのは凪紗なんだぞ。そもそも、凪紗が八雲と一緒にならずに腹の子のことを諦めてくれるなら話は早いんだ。お前がアイツに執着してるから、交換条件が成立しちまってるんだよ】
どうやら本当に怒らせてしまったらしい。アキトくんはいつも私の話に耳を傾けてくれる人だが、ここまで自分勝手な私に呆れたのだろう。
でも、お腹の子について、そんな悲しいことを言わないでほしい。
そっとお腹に触れてみる。
──なんだかいつまでも実感が湧かない。本当に、ここに赤ちゃんがいるのかな。